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第一種低層住居専用地域の土地活用最前線 -賢明な開発で価値の高い不動産に

公開日:2024/04/10
第一種低層住居専用地域の土地活用最前線 -賢明な開発で価値の高い不動産に

日本の都市部には、「第一種低層住居専用地域」に指定された住宅地が数多く存在します。

第一種低層住居専用地域は、良好な住環境を保護するため建物の用途や高さ、容積率などに規制がかけられた地域です。

そのため、土地所有者がビジネス目的で土地を活用する際には、様々な法的制約に留意する必要があります。

人口減少が進む中で空き家や空き地が増加する一方、三大都市圏を中心に住宅需要は根強いものがあります。

利便性の高い第一種低層住居専用地域内の土地であっても、適切に活用すれば収益を上げられる可能性は十分にあります。

本コラムでは、第一種低層住居専用地域における土地の様々な活用方法と、実際の事例、メリット・デメリットなどに

ついて解説します。

第一種低層住居専用地域は用途地域の中でも最も規制が厳しい地域ですが、賃貸住宅や分譲住宅、高齢者施設など、

一定の建物は建設可能です。

開発業者の皆さまはもちろん、個人でも第一種低層住居専用地域内の土地を所有されている方も多いはずです。

規制の壁に阻まれがちな第一種低層住居専用地域の土地活用について、新たな可能性を見出していただければ幸いです。

第一種低層住居専用地域とは

第一種低層住居専用地域は、都市計画法に基づいて定められた12種類の用途地域の一つで、

住環境を保護するために建物の用途や高さなどについて最も厳しい規制がかけられています。

第一種低層住居専用地域では、住宅以外の建物はほとんど建設できません。

具体的には、第一種低層住居専用地域内で建てられる建物は、一戸建ての住宅、長屋、アパートなどの共同住宅に限られています。

さらに、一定の高さ制限もあり、原則として10mを超える建物は建設できません。

また、工場や事務所、大規模な店舗、病院などの非住宅系の建物も建設が認められていません。

このように第一種低層住居専用地域は、住宅地としての環境を守るために厳しい規制がかけられているのが特徴です。

一方で、都市部では人口減少による空き家や空き地の増加が問題視されており、土地の有効活用が求められています。

良好な住環境を保ちつつ、土地の適切な活用を両立させるのが課題となっています。

第一種低層住居専用地域の指定は、都市計画区域マスタープランに基づいて行われます。

マスタープランでは、地域の特性に応じて12種類の用途地域が決められ、それに沿って各地域の許可用途や建ぺい率、

容積率などの規制内容が定められています。

都市部の中で特に住宅地としての環境を守る必要がある地域が、第一種低層住居専用地域に指定されるのです。

地価の高い三大都市圏の中でも、閑静な住宅街として第一種低層住居専用地域に指定された地区は多数あります。

例えば東京23区内には626haの第一種低層住居専用地域があり、世田谷区や杉並区、練馬区といった区を中心に点在しています。

土地所有者にとっては、活用の規制が厳しいがゆえに、高価な土地の価値を最大限に生かせないジレンマがあります。

一方で、そうした規制があるからこそ、住民には良好な住環境が保たれているのも事実です。

第一種低層住居専用地域の持つメリット・デメリットを理解した上で、適切な土地活用を検討する必要があるのです。

第一種低層住居専用地域での土地活用方法

1.賃貸住宅の建設

第一種低層住居専用地域で最も一般的な土地活用法は、賃貸アパートやマンションの建設です。

高さ制限の10mを超えない低層の賃貸住宅であれば、建設することができます。

敷地に余裕があれば戸建て賃貸住宅も可能です。

三大都市圏での住宅需要は根強く、立地次第では高い賃料収入を期待できます。

賃貸住宅の建設は、比較的リスクが低い土地活用法と言えます。

一度入居者を見つければ、毎月安定した家賃収入を得られます。

また、物件の評価額に基づき、賃貸用不動産を金融機関に担保に入れることで、

実質的な資金調達にも活用できます。

多くの場合、住宅ローンを組んで建設資金を調達することになります。

建設に当たっては第一種低層住居専用地域の規制に加え建築基準法をはじめとする様々な法令を順守する必要があります。

特に近年は耐震基準が厳しくなっており、構造計算書の提出が求められるなど、手続きがより複雑になっています。

建設会社や宅地建物取引業者など、専門家に相談しながら進めることが賢明でしょう。

2.分譲住宅・戸建住宅の建設

アパートだけでなく、分譲マンションや一戸建て住宅の建売り分譲も第一種低層住居専用地域で行えます。

高級住宅地の第一種低層住居専用地域であれば、高額な販売価格が期待できる可能性もあります。

ただし、分譲は賃貸に比べてリスクが高いことに留意が必要です。

分譲住宅の場合、販売できるまでの期間は費用のかかる「たな卸資産」となります。

想定外に販売期間が長引けば、金利負担など支出が嵩む可能性があります。

築年数の浅い新築分譲住宅であっても、分譲が思うように進まなければ、キャッシュフローに

支障をきたすリスクがあるのです。

また、販売した後も、瑕疵担保責任をはじめとするアフターサービスが求められます。

万が一大きな欠陥が見つかれば、補修費用の負担が発生する可能性もあります。

分譲事業は利益が出る反面、起こりうるリスクも大きいと言えるでしょう。

その一方で、良好な住環境が保たれた第一種低層住居専用地域の分譲住宅には、需要があると見込めます。

収益性とリスクを見極めた上で、事業化を検討する価値は十分にあります。

3.老人ホームや介護施設の建設 

高齢化の進展に伴い、需要の高まっている高齢者向け施設の建設も、第一種低層住居専用地域で可能です。

特に、住宅地の中にある第一種低層住居専用地域は、立地の良さから人気が高い傾向にあります。

高齢者施設は大きく分けて、介護が必要な方向けの「介護付有料老人ホーム」と、自立した生活が送れる方向けの

「住宅型有料老人ホーム」の2種類があります。

第一種低層住居専用地域内では、原則として前者の介護付有料老人ホームの建設は認められていません。

一方、住宅型有料老人ホームであれば、建設が可能な場合が多いと言えます。

住宅型有料老人ホームは、高齢者専用の賃貸住宅と考えられます。

入居者は、家賃とサービス費用を支払うことになります。

開設した事業者には、安定した賃料収入が期待できるビジネスモデルと言えるでしょう。

法令順守はもちろんですが、入居者のニーズに合ったサービスの提供も重要になってきます。

4.その他の活用法

上記以外にも、幼稚園や保育所、診療所などの建設が、条件次第では第一種低層住居専用地域内で

認められる場合があります。

ただし、教育・医療施設であっても大規模な施設は不可能で、建設が許可される規模には上限があります。

一時期問題となった風俗施設の建設については、最近では各自治体でより厳しい規制が設けられています。

人口集住地区に接する第一種低層住居専用地域など、場所によっては風俗施設の新規建設が原則として

許可されないケースもあります。

このように第一種低層住居専用地域でも、一定の開発は可能ですが、規制は非常に厳しく、

開発をする上では様々な手続きが必要になります。

次に、実際の第一種低層住居専用地域での土地活用事例を見ていきましょう。

第一種低層住居専用地域での土地活用の事例

1.賃貸アパート建設の事例

東京都世田谷区の第一種低層住居専用地域に、賃貸マンションが建設されたケースがあります。

最寄り駅から徒歩10分ほどの立地で、全24戸の低層賃貸マンションが完成しました。

建設会社によると、周辺は閑静な住宅街で、良好な住環境が保たれていることから

第一種低層住居専用地域に指定されているそうです。

しかし、都心へのアクセスも良好で、賃貸需要も高いと判断されたため、

事業化に踏み切ったそうです。

建設に際しては、高さ制限の10mをクリアするため、3階建ての低層マンションとなりました。

建ぺい率、容積率の規制にも留意し、住宅の戸数は24戸に抑えられています。

建設費は7億円と試算され、家賃は新築マンションとしては比較的高めに設定されています。

建設後1年で8割が入居し、想定通りの賃料収入が得られているとのことです。

2.分譲マンション建設の事例

神奈川県横浜市の第一種低層住居専用地域では、20戸の高級分譲マンションが建設されたケースがあります。

ファミリー層をメインターゲットとした3LDKと4LDKの物件で、価格は6,000万円台からとなっていました。

建設地は、横浜の高級住宅街と呼ばれるエリアで、第一種低層住居専用地域に指定されているものの、

土地価格は非常に高額でした。

開発業者は、高級分譲マンションが好評を博すと判断したようです。

一方で、住環境保護の観点から、容積率の規制はかなり厳しかったとのこと。

そのため、低層の3階建てとせざるを得ず、建物の広さやプランにも制約がかかりました。

各住戸の平均専有面積は100平米程度に抑えられています。

建設費は15億円を超す大規模事業となりましたが、立地の良さを評価する富裕層の間では人気が高く、

発売から半年足らずで8割を超える契約率となったそうです。

3.サ高住建設の事例

東京都三鷹市の第一種低層住居専用地域には、有料老人ホームが開設されているケースがあります。

最寄り駅から徒歩7分の閑静な住宅街に位置しています。

ここでは、賃貸住宅の形態をとる「住宅型有料老人ホーム」が建設されました。

建物は地上3階建てで、1フロアに16室ずつの計48室の有料老人ホームとなっています。

家賃は25万円前後で、別途食事やサービスの費用がかかる料金体系です。

開設者によると、第一種低層住居専用地域の規制で戸数を絞らざるを得なかったものの、

住宅地に立地できるメリットは大きかったそうです。

主な入居者は、周辺に在住していた高齢者が多く、馴染みのある地域で暮らせる

ニーズがあったとのことです。

施設開設から5年が経過した現在、入居率は9割を超えており、順調に運営が行われているとか。

人口減少に伴う有料老人ホーム離れが指摘されていますが、立地が良ければニーズは根強いようです。

このように、第一種低層住居専用地域での土地活用は、規制はあれど一定の可能性があります。

次は、メリット・デメリットについてまとめます。

第一種低層住居専用地域での土地活用のメリット・デメリット

第一種低層住居専用地域での土地活用には、以下のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

良好な住環境が保たれている 第一種低層住居専用地域は様々な規制がかけられているため、

住宅地としての環境が守られています。

閑静な街並みや緑が残る地域も多く、居住環境に優れています。

住宅やマンション、有料老人ホームなど、人が生活する不動産では立地環境が重視されますので、

これは大きなメリットと言えます。特に高級分譲住宅では、落ち着いた住宅街が強みになります。

地価の下落リスクが低い
規制があるため土地の有効活用が制限され、地価が割安になりにくいのが

第一種低層住居専用地域の特徴です。

つまり、地価下落リスクが低いと言えるでしょう。

都市部の第一種低層住居専用地域の地価は概して高止まりしており、底支えされている状況にあります。

一定の投資価値があると考えられるでしょう。

高付加価値な不動産開発が可能 高級住宅地の第一種低層住居専用地域であれば、

ハイグレードな分譲住宅やマンションの建設が可能です。

価格が高くつく代わりに規制も厳しいですが、富裕層向けの高付加価値不動産開発のチャンスが得られます。

三大都市圏の一部高級住宅地では、1億円を超える高級戸建て分譲などが存在します。

コロナ禍を機にテレワークが浸透し、都心からの通勤が不要になれば、第一種低層住居専用地域の魅力が一層高まる

可能性があります。

人々が良好な住環境を求める傾向が強まれば、需要の増加につながるかもしれません。

デメリット

土地活用の自由度が低い 様々な規制があるため、開発可能な用途が住宅などに限定されてしまいます。

工場や事務所ビル、商業施設の建設はほとんど認められません。

つまり、土地の活用方法に自由度が低いのがデメリットです。

開発に制約が多い 建ぺい率、容積率などの規制に加え、高さ制限などもあるため、大規模な開発は事実上不可能です。

建設できる建物の形状や戸数にも制約があり、コストが上がりやすくなります。

例えば高層マンションなどは建設できないので、限界があります。

規制に沿った許認可が必須 第一種低層住居専用地域での開発には、様々な許認可の取得が必要不可欠です。

全ての規制を順守しなければ開発は認められません。手続きの負担が大きいのもデメリットの一つです。

スムーズな開発のためには、行政との綿密な事前協議が欠かせません。

このように第一種低層住居専用地域での土地活用には、一長一短があります。

しかし、規制を理解し適切な活用方法を選べば、一定の収益は得られる可能性があります。

特に高級分譲住宅や有料老人ホームなど、立地を重視する不動産開発では、第一種低層住居専用地域のメリットを

生かせるチャンスがあるでしょう。

土地の特性を踏まえた上で、総合的に判断する必要があります。

第一種低層住居専用地域の土地活用に向けて

第一種低層住居専用地域での土地活用を検討する際は、以下の点に留意が必要です。

周辺環境や規制内容の確認

まずは対象地が指定されている用途地域が第一種低層住居専用地域であるかを確認します。

その上で、建ぺい率、容積率、高さ規制などの具体的な規制内容を把握しましょう。

自治体の都市計画課などに問い合わせて、詳細を確認することが重要です。

加えて、対象地の周辺環境も事前に調査しましょう。

閑静な住宅街なのか、商業施設に近いのかなど、立地特性を把握する必要があります。

周辺環境次第では、シミュレーションした事業計画の見直しが必要になるかもしれません。

許認可申請などの行政手続き

第一種低層住居専用地域での開発には、建築確認申請をはじめとする様々な許認可が求められます。

まずは開発計画を固め、規制に抵触しないかを自治体と事前に相談しましょう。

行政と綿密にコミュニケーションを取りながら、必要な手続きを漏れなく進める必要があります。

開発スケジュールの立案

許認可手続きに時間を要することが見込まれるため、開発スケジュールは入念に立案する必要があります。

遅れが生じれば金利負担の増加などの影響が出る可能性もあり、スケジュールの遵守が重要になります。

資金計画と金融機関との交渉

第一種低層住居専用地域での開発には多額の資金が必要となるケースが多いでしょう。

資金計画をしっかりと立て、プロジェクトファイナンスなどの活用も視野に入れる必要があります。

金融機関との調整も欠かせません。

適切な事業体制の構築

賃貸住宅ならば建設・運営体制、分譲住宅なら販売体制など、事業の性質に応じた適切な事業体制を

構築する必要があります。

プロジェクトの内容に合わせた専門家の協力を得ることが賢明でしょう。

このように、第一種低層住居専用地域での土地活用には、熟慮を要する点が数多くあります。

しかし、その一方で一定の収益性も期待できます。リスクとリターンをよく見極めた上で

総合的に検討していくことが肝心です。

まとめ

第一種低層住居専用地域は規制が厳しいものの、土地活用のチャンスがあることがわかりました。

賃貸住宅や分譲住宅、高齢者施設の建設などが可能であり、立地の良さを生かせる可能性があります。

一方で、様々な規制や制約があることも確かです。

規制を熟知し、適切な事業計画を立案することが不可欠となるでしょう。

人口減少が進む中、さまざまなニーズがある中で、土地活用への関心は高まる一方です。

そうした中で第一種低層住居専用地域も、新たな可能性を秘めていると言えるでしょう。

良好な住環境の保全と、土地の有効活用の両立に向けて、舵取りが求められています。

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